IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者を対象に、ITツールの導入に係る費用を補助する制度です。
2022年のIT導入補助金は、従来の通常枠である「A類型」「B類型」に加えて、デジタル化基盤導入枠として「デジタル化基盤導入類型」「複数社連携IT導入類型」が新たに追加されました。
本記事では、IT導入補助金について、概要や制度の特徴について解説していきます。これから補助金の申請を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
IT導入補助金のおさらい
まずは、IT導入補助金のおさらいとして制度の概要や目的について解説していきます。本補助金の目的が、自社で行おうとしている取り組みに合致するか改めて確認しましょう。
IT導入補助金とは?
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者を対象に、ITツールの導入に係る費用を補助する制度です。ITツールの導入によって経営課題を解決し、業務の効率化や生産性の向上を促すことを目的としています。
2022の追加枠
2022年のIT導入補助金では、デジタル化基盤導入枠として「デジタル化基盤導入類型」「複数社連携IT導入類型」が新設されました。
IT導入補助金2022の変更点は?
令和4年3月に公表された公募要項では、通常枠である「A類型」「B類型」に加えて、デジタル化基盤導入枠として「デジタル化基盤導入類型」「複数社連携IT導入類型」が設けられました。
デジタル化基盤導入枠は、インボイス制度への対応等を見据え、企業間取引のデジタル化を推進することを目的としています。そのため、通常枠よりも高い補助率が設定されています。
それぞれの相違点については、公募要項より下表の通りまとめられます。
令和3年度補正予算
デジタル化基盤導入枠 |
令和元年度補正予算
通常枠 |
||||||
類型名 | デジタル化基盤導入類型 | 複数社連携IT導入類型 | A類型 | B類型 | |||
補助額 | ITツール | PC・タブレット等 | レジ・券売機 | (1)デジタル化基盤導入類型の対象経費
⇒左記と同様 (2)上記(1)以外の経費 ⇒補助上限額は50万円 ×参画事業者数、補助率は2/3以内 (1事業あたりの補助上限額は、3,000万円((1)+(2)) 及び事務費・専門家費) |
30万円~150万円未満 | 150万円~450万円以下 | |
5万~350万 | ~10万円 | ~20万円 | |||||
内、5万円~50 万円以下部分 | 内、50万円超~ 350万円部分 | ||||||
機能要件 | 会計・受発注・
決済・ECのうち1機能以上 |
会計・受発注・
決済・ECのうち2機能以上 |
左記ITツールの使用に資するもの | 1プロセス以上 | 4プロセス以上 | ||
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 | 1/2以内 | 1/2以内 | |||
対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料最大2年分)、ハードウェア購入費、導入関連費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料1年分)、導入関連費 |
また、主な変更点については以下で解説していきます。
会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに特化
デジタル化基盤導入枠では、会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに補助対象を特価しています。
補助額5万円~50万円以下については、補助率を通常の1/2から3/4に引き上げ、補助額50万円超~350万円については、補助率を通常の1/2から2/3に引き上げています。
PC・タブレット、レジ・券売機等の購入が補助対象
デジタル化基盤導入枠では、PC・タブレット、レジ・券売機等の購入も補助対象に追加されました。
PC・タブレットについては、補助上限額が10万円、補助率が1/2となっています。また、レジ・券売機等については、補助上限額が20万円、補助率が1/2となっています。
クラウド利用料も対象経費に
通常枠・デジタル化基盤導入枠の双方において、クラウド利用費も対象経費となりました。通常枠ではクラウド利用料1年分が、デジタル化基盤導入枠では2年分がまとめて補助されます。
通常枠とデジタル化基盤導入類型の内容と特徴の紹介
ここでは、通常枠とデジタル化基盤導入枠の内容と特徴について紹介していきます。枠によって補助対象や補助上限額、補助率が異なります。自社で導入しようとしているITツールについて、どの枠で申請すれば最適であるのかを確認しましょう。
通常枠(A類型・B類型)について
通常枠とは、生産性向上を目的としてITツールの導入に対して補助が行われます。「A類型」と「B類型」によって異なる点もあるため、申請前に確認するようにしましょう。通常枠の概要について、下表にまとめます。
通常枠 | ||
種類 | A類型 | B類型 |
補助額 | 30万~150万円未満 | 150万~450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 | |
プロセス数※1 | 1以上 | 4以上 |
ITツール要件(目的) | 類型ごとのプロセス要件を満たすものであり、労働生産性の向上に資するITツールであること。 | |
賃上げ目標 | 加点 | 必須 |
補助対象 | ソフトウェア費・クラウド利用料(最大1年分補助)・導入関連費等 |
1:「プロセス」とは、業務工程や業務種別のことを指します。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)について
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)とは、インボイス制度の対応を見据え、企業間取引のデジタル化を目的として新設されました。
会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフト等のITツールに加えて、パソコン・タブレット端末・レジ・券売機等のハードウェア導入費用を優先的に支援する制度です。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の概要について、下表にまとめます。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
補助額 | ITツール | |
5万円~350万円 | ||
内、5万円~50万円以下部分 | ||
機能要件 | 会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 | |
補助率 | 3/4以内 | |
対象ソフトウェア | 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト | |
賃上げ目標 | なし | |
補助対象 | ソフトウェア購入費・クラウド利用費(最大2年分補助)・導入関連費等 | |
ハードウェア購入費 | PC・タブレット・プリンター・スキャナー及びそれらの複合機器
補助率1/2以内、補助上限額10万円 |
|
レジ・券売機等
補助率1/2以内、補助上限額20万円 |
今後のスケジュール
ここでは、IT導入補助金の申請スケジュールについて紹介します。通常枠とデジタル化基盤導入枠では、それぞれ申請スケジュールが異なるため注意が必要です。申請締切日をしっかりと確認し、余裕を持って申請手続きを進めていくようにしましょう。
通常枠(A・B類型)
通常枠(A・B類型)の申請スケジュールは下表の通りです。
通常枠 | |
1次締切分締切日 | 5月16日(月)17:00 |
2次締切分締切日 | 6月13日(月)17:00(予定) |
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の申請スケジュールは下表の通りです。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型) | |
1次締切分締切日 | 4月20日(水)17:00 |
2次締切分締切日 | 5月16日(月)17:00 |
3次締切分締切日 | 5月30日(月)17:00(予定) |
4次締切分締切日 | 6月13日(月)17:00(予定) |
申請時の注意点について
ここでは、IT導入補助金の申請時の注意点について解説していきます。申請に際しては、IT導入支援事業者との相談や、SECURITY ACTIONの取得が必須となります。どちらも準備には一定の期間を要するため、余裕のあるスケジュールで進めていきましょう。
IT導入支援事業者との相談が必須
IT導入補助金の申請は、事務局に登録されたIT導入支援事業者と連携して、生産性向上に寄与する適切なITツールを選択することが必須です。そのため、自社だけでITツールを選定し申請することはできず、IT導入支援事業者との相談が必ず必要となります。
SECURITY ACTIONについて
IT導入補助金の申請には、「gBizIDプライム」アカウント取得に加えて、「SECURITY ACTION」の宣言が必須となりました。SECURITY ACTIONとは、IPAが実施している国内企業の情報セキュリティ向上のための制度です。ランクに応じて1つ星と2つ星があります。2つ星の取得は必須ではありませんが、審査を有利に進めるため、可能であれば2つ星を取得しましょう。申請はSECURITY ACTIONのホームページより行い、審査には1~2週間程度の期間を要するため、早めの準備が必要です。
まとめ
本記事では、IT導入補助金の制度や概要について、通常枠とデジタル化基盤導入枠に分けて解説しました。
本制度は企業のITツール導入を促進する制度であり、これまでIT化が思うように進まなかった企業にとっては大きなチャンスとなります。
また、デジタル化基盤導入枠は、インボイス制度への対応を見据えた制度であるため、この機会にインボイス制度の対応を検討してみてはいかがでしょうか。
IT導入補助金の申請に際しては、IT導入支援事業者と相談しながら行うことが必須となっています。まずは、IT導入支援事業者へ相談し、自社の生産性向上や業務効率化に最適なITツールを選定するところから始めてみましょう。