持続化補助金は、小規模事業者が行う販路開拓や生産性向上の取組みに要する経費の一部を支援する補助金制度です。
令和3年度の補正予算では新たな募集枠も創設され、より活用しやすい制度となりました。本記事では、持続化補助金の概要や制度拡充の内容などについて解説していきます。これから補助金の申請を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
通常枠について
持続化補助金の概要、補助対象者、補助率や補助上限額はどのようになっているのでしょうか。ここでは、持続化補助金のうち「通常枠」について解説していきます。制度の概要を理解し自社の事業が該当するかを確認しましょう。
通常枠の概要
通常枠は、小規模事業者の持続的な経営計画に基づき行われる、販路開拓や生産性向上の取組みに要する経費の一部が補助される制度です。対象となる事業は、商工会・商工会議所のサポートを受けながら取り組むケースが多いです。
補助対象者(小規模事業者の定義)
小規模事業者とは、常時使用する従業員の数によって下表のように定義されます。業種によって人数が異なる点に注意が必要です。
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
通常枠の補助率、補助上限額
通常枠の補助率は、補助対象経費の3分の2とされています。また、補助上限額は50万円までとなっています。申請時に事業計画を立てる際には、自社の取組みに要する経費のうち、いくらまでが補助対象となるのかを確認しましょう。
令和3年度補正予算 持続化補助金の拡充されたのは?
令和3年度の補正枠では、いくつかの特別枠が新設されました。特別枠は5つあり、「賃金引上げ枠」「卒業枠」「後継者支援枠」「創業枠」「インボイス枠」となります。特別枠では、補助上限額の上乗せや、赤字事業者への補助率引上げなどの拡充が行われており、以下で詳細について紹介していきます。
新たに追加された特別枠
新たに追加された特別枠は、制度の趣旨や特徴から「成長・分配強化枠」「新陳代謝枠」「インボイス枠」と大別されます。下表でそれぞれの枠についてまとめます。
大別名 | 枠名 |
成長・分配強化枠 | 賃金引上げ枠 |
卒業枠 | |
新陳代謝枠 | 後継者支援枠 |
創業枠 | |
インボイス枠 | インボイス枠 |
成長・分配強化枠の新設
成長・分配強化枠には、賃金引上げ枠と卒業枠が該当します。下表で、それぞれの枠の要件や補助上限・補助率についてまとめます。
枠名 | 賃金引上げ枠 |
要件 | 補助事業の終了時点において、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上であること。すでに事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上を達成している場合は、現在支給している事業場内最低賃金より+30円以上とする必要がある。 |
補助上限・補助率 | 200万円・3分の2(赤字事業者の場合は、4分の3に引上げ) |
枠名 | 卒業枠 |
要件 | 補助事業の終了時点において、常時使用する従業員の数が小規模事業者として定義する従業員数を超えていること。業種ごとに、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)の場合は6人以上、サービス業のうち宿泊業・娯楽業の場合は21人以上、製造業その他の業種の場合も21人以上で要件に合致。 |
補助上限・補助率 | 200万円・3分の2 |
新陳代謝枠の新設
新陳代謝枠には、後継者支援枠と創業枠が該当します。下表で、それぞれの枠の要件や補助上限・補助率についてまとめます。
枠名 | 後継者支援枠 |
要件 | 申請時において、「アトツギ甲子園」のファイナリストになった事業者であること。 |
補助上限・補助率 | 200万円・3分の2 |
枠名 | 創業枠 |
要件 | 産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を公募締切時から起算して過去3か年の間に受け、かつ、過去3か年の間に開業した事業者であること。 |
補助上限・補助率 | 200万円・3分の2 |
インボイス枠の新設
インボイス枠枠の要件や補助上限・補助率は、下表のとおりです。
枠名 | インボイス枠 |
要件 | 2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった又は免税事業者であることが見込まれる事業者のうち、適格請求書発行事業者の登録が確認できた事業者であること。 |
補助上限・補助率 | 100万円・3分の2 |
事業者の優先採択について
持続化補助金では、中小企業白書による企業類型によって優先採択を行っています。2020年版中小企業白書では、中小企業・小規模事業者は「グローバル型」「サプライチェーン型」「地域資源型」「地域コミュニティ型」の4つに分類されています。以下で詳細について説明していきます。
優先採択されるのは、「地域資源型」「地域コミュニティ型」
令和3年度補正予算の持続化補助金では、地域資源型と地域コミュニティ型が優先採択の対象となっています。持続的成長を目指し地方創生に尽力する該当事業者は、パワーアップ型加点として優先採択されます。
申請類型一覧
申請類型の一覧は下表の通りです。申請できる枠は1つのみのため、注意が必要です。
類型 | 通常枠 | 特別枠 | ||||
成長・分配強化枠 | 新陳代謝枠 | インボイス枠 | ||||
賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠枠 | 創業枠 | |||
概要 | 経営改善に沿った販路開拓や業務効率化等 | 賃金・雇用増加による事業規模拡大 | 小規模事業者の従業員数を超える事業規模拡大 | 事業承継に取り組むアトツギ甲子園のファイナリスト | 認定市区町村による特定創業支援等事業の支援を受け開業 | 免税事業者だった場合にインボイス発行事業者として新たに登録 |
補助上限 | 50万円 | 200万円 | 100万円 | |||
補助率 | 2/3 | 2/3※ | 2/3 | |||
※赤字事業者は3/4&加点による優先採択を実施 |
優先採択のための加点措置一覧
パワーアップ型加点 | 地域資源型 | 地域外への販売や新規事業への取組み計画。地域資源を活用して、良質な商品・サービスを高値で提供し、付加価値額工場を目的とする。 |
地域コミュニティ型 | 地域の生活や労働環境などの課題解決を行い、地域内の需要を促すための取り組み計画であること。 | |
赤字賃上げ加点 | 賃金引上げ枠へ申請する事業者が赤字である場合。 | |
東日本大震災加点 | 福島第一原子力発電所の被害に見舞われた水産加工事業者等。 | |
経営力向上計画加点 | 中小企業等経営強化法に則り「経営力向上計画」の認定を受けている事業者 | |
電子申請加点 | jGrants(デジタル庁運営の補助金電子申請システム)を使い電子申請した事業者。 | |
事業承継加点 | 代表者が満60歳以上であり、加えて後継者候補が中心となり補助事業を実施する場合。 | |
過疎地域加点 | 「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」で定める過疎地域に拠点を置き、地域経済の持続的発展に結びつく活動を行う事業者。 |
今後のスケジュール
令和3年度補正予算の持続化補助金は、下記のスケジュールで実施されます。電子申請で使用する「GビズIDプライムアカウント」の発行には、一定の期間を要します。そのため、電子申請を検討している方は、事前にアカウント発行を済ませておくとよいでしょう。
応募開始 | 2022年3月29日 |
応募締切 | 2022年6月3日(8次締切) |
応募方法 | ①jGrantsによる電子申請
②郵送での申請 |
まとめ
本記事では、令和3年度補正予算の持続化補助金について解説していきました。これまでも、幅広い業種や取組みに対して支援を行っていた持続化補助金ですが、特別枠の創設により活用のしやすさが向上しました。
補助金の申請に際しては、事業計画や資金繰りなど対応すべき事項が多くあるため、必要に応じて行政書士や中小企業診断士などの申請サポートを活用することをおすすめします。
これらを活用することで、事業者は本業に専念できるという点も大きなメリットの一つです。補助金の申請を検討している方は、専門家サポートの活用も検討してみてはいかがでしょうか。