2021年の補正予算案は、岸田内閣による「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の実行を大きな目的とし、総額36.9兆円という過去最大の規模となりました。新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業への支援策は、これまでにないレベルで拡充されています。
本記事では、2021年度の補正予算の概要や内訳について解説していきます。各種中小企業支援策への申請を検討されている事業者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
補正予算について
ここでは、補正予算の概要や内訳について紹介していきます。2020年度予算より開始した「事業再構築補助金」の他、新たに「事業復活支援金」等も設けられました。既存の補助金制度についても、新たな枠が創設されているものもあるので確認してみましょう。
補正予算とは
補正予算とは、国や地方自治体が当初組んでいた予算に対して補正的に設けられる予算をいいます。新型コロナウイルスや災害対応等の突発的な事象が発生した場合、当初予算だけでは賄えなくなることがあります。そのような場合、国会で補正予算案の審議を経て議決されることにより、補正予算が成立するのです。
2021年の補正予算案では、岸田内閣による「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の実行が大きな目的でした。総額36.9兆円という過去最大の規模となりました。
2021年度の歳出総額は合計142.5兆円
2021年度の一般会計の追加歳出の総額は、補正予算としては過去最大の35兆9,895億円でした。当初予算と合わせた歳出総額は142.5兆円となり、コロナ禍への対応を目的とした歳出増加の傾向が続いています。
中小企業庁に割り当てられた予算は3.9兆円
補正予算案のうち、中小企業庁に割り当てられた予算は3.9兆円でした。同庁による中小企業支援のための予算であり、詳細は中小企業庁の公式サイトでポイントがまとめられています。ここでは、中小企業庁の概要や予算の内訳について紹介します。
中小企業庁とは
中小企業庁とは、中小企業庁設置法によって設置された経済産業省の外局です。「健全な独立の中小企業が、国民経済を健全にし、また発達させるものであり、企業を営もうとする者に対して、公平な事業活動の機会を確保する」ことを設置目的としており、中小企業を育成し、発展させ、その経営を向上させる取り組みを行っています。
同庁が所掌する事務および権限には、
・「中小企業の育成および発展を図るための基本となる方策を定めること」
・「中小企業の育成・発展、その経営の向上に必要な事項についての情報の収集・分析・供給を行い、中小企業の経営に関する相談、中小企業に関する行政についての苦情等につき必要な処理または斡旋を行うこと」
・「中小企業に対する資金の融資の斡旋など」
があります。
予算の内訳を解説
令和3年度の補正予算では、コロナウイルスの影響による経済対策として、様々な補助金・給付金が用意されました。
ここでは、予算の内訳について補助金・給付金の種類ごとに概要を説明していきます。
事業復活支援金(2.8兆円)
事業復活支援金は、新型コロナウイルスの影響を受ける事業者を対象とする支援金です。地域・業種を問わず、売上高減少額を基準に支給され、算定された金額を一括給付する点が大きな特徴です。下記に概要をまとめます。
対象者 |
コロナの影響で、2021年11月~2022年3月のいずれかの月の売上高が50%以上または30%~50%減少した事業者 |
開始時期 |
補正予算成立後、所要の準備を経て申請受付開始予定 |
給付額 |
5か月分(11~3月)の売上高減少額を基準に算定 |
事業再構築補助金(6,123億円)
事業再構築補助金は、2020年度補正予算から始まった補助金ですが、2021年度補正予算案にも盛り込まれました。
「回復・再生応援枠」「グリーン成長枠」の創設が予定されています。
「回復・再生応援枠」は、引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者を対象とします。通常枠の申請要件に加え「2021年10月以降のいずれかの月の売上高が対2020年または2019年同月比で30%以上減少していること」「再生支援協議会スキーム等に則り再生計画を策定していること(詳細な要件は検討中)」のいずれかを満たすことが要件とされています。
「グリーン成長枠」は、グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象とします。補助限度額は最大1.5億円まで引き上げられ、売上高の10%減少要件が課されない点が大きなポイントです。グリーン成長枠の例としては、ガソリン車向け部品製造から電気自動車向け部品製造への事業転換が挙げられています。
中小企業に対する資金繰り支援
コロナウイルスによる影響を受けた中小企業に対して、引き続き資金繰り支援が行われることが決定しました。具体的には、以下の内容の支援策を実施します。
施策内容 |
期限 |
実質無利子・無担保融資 |
2021年度末まで |
資本性劣後ローン |
2022年度も継続 |
伴走支援型特別保証 |
2022年度も継続 |
ものづくり補助金をはじめとする生産性向上への補助金(2,001億円)
中小企業の生産性を向上する補助金は、ものづくり補助金を始めとして引き続き予算に盛り込まれました。今回の補正予算では、カーボンニュートラルや2023年10月に導入されるインボイス制度へ対応するための支援も含まれています。主要な補助金と概要について下表にまとめます。
制度名 |
概要 |
ものづくり補助金 |
最大2,000万円の設備投資補助 |
持続化補助金 |
最大200万円の販路開拓等補助 |
IT導入補助金 |
最大350万円のITツール導入補助 |
事業承継・引継ぎ補助金 |
最大600万円の事業承継・引継ぎに係る取組補助 |
事業再編・再生支援(757億円)
事業再編や再生支援について、官民連携のファンドや中小企業再生支援協議会の支援体制を拡充するために予算が盛り込まれました。
中小企業の私的整理等のガイドラインを年度内に作成される予定です。
「がんばろう!商店街」事業(既存予算)
その他の事業として「がんばろう!商店街」事業があります。これは、コロナウイルスの感染状況を踏まえ、商店街等が行う需要喚起イベント等の開催を支援する制度です。
令和3年度補正予算では、イベント参加者の感染リスク低減を目的とした「期間・時間・場所」を分散させる取り組みを優先的に支援するとしています。また、「ワクチン・検査パッケージ」の導入にかかる費用を補助対象に追加し、補助上限額を引き上げる予定です。
引き続き新型コロナに対応するための支援が行われる
補正予算の内訳内容からも、引き続き新型コロナウイルスに対応するための支援が強力に推進されることが分かります。ここでは、新型コロナウイルスに関する支援策のうち、特に主要なものについて紹介します。
事業復活支援金で売り上げが落ちた事業者を支援
事業復活支援金は、新型コロナウイルスの影響を受ける事業者を対象とする支援金です。地域・業種を問わず、固定費負担の支援として5カ月分の売上高減少額を基準に支給されます。また、給付金の額は、事業規模や売上減少率によって上限額が異なり、売上の減少が大きいほど金額が大きくなります。中小企業と個人事業主の給付額(5か月分)をまとめたものは下表の通りです。
中小企業等 |
売上50%以上減 |
売上30~50%減 |
・年間売上5億円超 |
最大250万円 |
最大150万円 |
・年間売上1億円超~5億円以下 |
最大150万円 |
最大90万円 |
・年間売上1億円以下 |
最大100万円 |
最大60万円 |
個人事業主 |
最大50万円 |
最大30万円 |
事業再構築補助金で事業転換をサポート
事業再構築補助金は、2020年度予算から実施されている補助金ですが、引き続き本制度による事業転換のサポートが決定しました。
一部要件が緩和され、現行の売上高10%減少要件のうち、「2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高がコロナ以前と比較して5%以上減少していること」が撤廃されることになりました。
これにより「2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること」のみが要件となります。
資金繰り支援で無利子・無担保での融資が行われる
コロナウイルスによる影響を受けた中小企業に対する資金繰り支援として、無利子・無担保での融資が実施されます。
「実質無利子・無担保融資」「資本性劣後ローン」「伴走支援型特別保証」などの制度が設けられる予定であり、申請条件や申請期限については各金融機関の窓口へ確認してみましょう。
まとめ
本記事では、令和3年補正予算案における中小企業支援の内容について解説しました。コロナウイルスによる経済停滞は深刻であり、様々な業種において売上・客数の減少といった影響が出ています。このような状況を打破するための、各種支援策は幅広い業種を対象としているため、ぜひ活用を検討したい制度です。
また、各種支援策へ申請する際には、専門家サポートの活用をおすすめします。申請サポートを利用することにより、採択される可能性が高まるだけでなく、本業に集中できるといったメリットもあります。申請をお考えの方は、ぜひ専門家サポートもご検討ください。