概算要求基準は、翌年度の予算について政府が毎年要求するもので、1961年から導入されています。各省庁は8月末までに予算を要求し、財務省の査定を得て年末に予算案を発表します。
今回は、令和4年度の概算要求基準を取り上げ、2年ぶりに復活した「特別枠」について説明します。
令和4年度に特別枠が復活した理由や、どのような分野において特別枠が置かれたのか、政府が力を入れている4つの分野とは何かなど、
概算要求基準に関して詳しく説明するので、ぜひ参考にしてください。
今回公表された令
まずは、今回公表された令和4年度の予算の概要要求基準に対して、年金・医療などの社会保障、裁量的経費について説明します。
年金・医療等の社会保障
令和4年度の予算の概要要求基準を見てみると、令和4年度概算要求の一般会計における総額は33兆9,450億円で、前年度より8,070億円の増加となりました。要求額のうち大半は、医療や年金などの社会保障費で、31兆7,791億円です。
これを見て分かる通り、年金や医療などの社会保障が多くかかっており、コロナ対策が主な要因となっています。
他には、安心して暮らせる社会を作るために、診療報酬・薬価改定、雇用保険の国庫負担、建設アスベスト給付金、児童虐待防止対策・社会的養育、不妊治療の保険適用などです。
裁量的経費
裁量的経費とは、国と地方公共団体の経費負担区分に基づいて、国が地方公共団体に対して支出する負担金、委託費、特定の施策又は財政援助のための補助金のことをいいます。
令和4年度の予算の概要要求基準での裁量的経費は、前年度の予算額の90%の範囲内で要求することとしており、義務的経費を削減した場合は、同額を裁量的経費に充てるとされています。
国の裁量的経費は、あらかじめ決まっているので、その予算内で地方公共団体はお金を使わなければなりません。
特別枠について
7月7日の臨時閣議で2年ぶりの特別枠が設定され、4つの分野で取り入れられます。これから、特別枠について説明します。
予算の重点化が進められる特別枠(新たな成長推進枠)
2年ぶりに特別枠が戻ってきたのは、グリーン、デジタル、地方活性化、子供・子育ての4つの分野であり、成長推進枠であるため、新たに取り入れられました。また、裁量的・義務的経費を削減し、3倍程度を新たな成長推進枠に抑制しました。さらに、社会保障費の高齢化に伴う自然増は6600億円に抑制されています。
これを見て分かる通り、予算の重点化が4つの分野に置かれたのです。
特別枠で対策が強化される4つの分野
特別枠で対策が強化されているのは、
・グリーン社会の実現
・官民挙げたデジタル化の加速
・日本全体を元気にする活力ある地方づくり
・少子化の克服、子供を産みやすい社会の実現
の4つです。
グリーン社会の実現
日本では2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするスローガンを掲げており、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指しています。また、2030年までには、2013年と比べて46%減少させるという目標を掲げています。
他にも、様々なイノベーションが推進されており、経済産業省のHPには次のように掲げられています。
日本では、過去に例のない2兆円の基金を創設し、過去最高水準の最大10%の税額控除を行います。次世代太陽光発電、低コストの蓄電池、カーボンリサイクルなど、野心的イノベーションに挑戦する企業を、腰を据えて支援することで、最先端技術の開発・実用化を加速させます。
このように、グリーン社会実現に力を入れていくため、今回特別枠が用意されました。
官民挙げたデジタル化の加速
日本では新型コロナウイルスを機に、ITの利用が一層増えました。そして今後は更なるデジタル化を促進し、ポストコロナの新しい社会を目指しています。
主な取り組みとしては、
・デジタル庁創設
・行政のデジタル化
・規制改革
・公務員のデジタル職採用
・マイナンバーカード
・教育のデジタル化
・デジタル格差の解消に向けた活用支援
・テレワーク
・携帯電話の料金の引下げ
などです。
デジタル化の加速は、少子高齢化が進む日本企業での人材不足を解消するメリットもあります。
日本全体を元気にする活力ある地方創り
3つ目は、日本全体を元気にする活力ある地方創りです。
日本では若い世代が都市部に移住し、地方での少子高齢化が深刻な問題となっています。地方に新しい世代が住まなくなると、地方を支える人材がいなくなり、様々な問題がでてきます。
そのため、近年は地方を活性化するための対策がとられており、デジタルを通して東京一局集中を改善し、地方へ人が流れるための国からの支援もあります。
地方を活性化するためには新しい移住方法が考えられており、東京と地方の二地域居住をすることで、地方と都市を往来できたり、東京で働いて週末は地域で過ごす、出社時は東京でテレワークは地方で行うなど、新しいライフスタイルの提供をしています。
また、この流れを機に、地方でスタートアップをしやすい環境を提供し、新しい風が吹くことで地元の若い世代の意欲が湧いたり、地方から海外への製品輸出など、地方での取り組みの活性化を目指しています。
少子化の克服、子供を産み育てやすい社会の実現
最後は、少子化の克服と子供を産み育てやすい社会の実現です。日本では急激に人口が減っており、高齢化が進んでいます。やがて3人に1人が65歳以上の高齢者になることが懸念されており、早急な対策が必要となっているのです。
急激な人口減少は経済産業や社会保障などの問題はもちろん、国を維持する上でも問題となるため、少子化の克服と子供を産み育てやすい環境を提供しなければいけません。
日本で行っている少子化の克服、子育てしやすい社会の実現は次の通りです。
少子化社会対策基本法
まずは、少子化社会対策基本法です。これは、2003年から施行されたものであり、これをもとに対策が行われています。制定された目的、内閣府に載っています。下記は抜粋した物です。
「少子化とは出生率が低下し、子どもの数が減少すること日本の少子化を抑制するため「少子化社会対策基本法」が制定され、2003年9月から施行
「少子化社会対策基本法」とは、国民生活に深刻かつ多大な影響をもたらす急速な少子化進展への対策を目的としている」
子育て支援を実施
2つ目に、子育て世帯を支援する対策をしています。2015年から財源を確保して保育園への受け入れを増やし、子供を預けて働ける環境を用意しました。さらに、「待機児童解消加速化プラン」や「保育士確保プラン」もとられています。
若い年齢で結婚・出産ができる対策
出生率が下がったのは、晩婚化して結婚する年齢が上がったことが背景にあります。日本では、年々晩婚化が進んでおり、高齢出産も一つの課題となっています。そのため、若年層が結婚・出産できるような経済的サポートや自治体や商工会議所からの支援を実施しているのです。
多子世帯への配慮
多子世帯では教育費が他の家庭に比べて多くかかり、それが原因で子供の人数を減らし、1〜2人に抑える家庭も多いです。これを解消するために、多子世帯に対しては、子育て、保育、住居などの負担を減らし、自治体や企業、公共交通機関からへの優遇措置や配慮がされるようになっています。
まとめ
令和4年度の概算要求基準では、2年ぶりに特別枠が復活しました。特別は、デジタル、グリーン、地域社会活性化、子供・子育ての4つの分野にて置かれており、政府が現在最も力を入れている4つの分野です。これらの分野は、日本の少子高齢化を背景に考えられており、早急に対策を必要とします。
特別枠が用いられたことで、高齢者の社会保障などに関する部分で予算が削られており、上記の4つの分野に予算が置かれています。
また、去年は新型コロナウイルス対策に予算が使われており、様々な分野で予算が削られています。そのため、来年は4つの分野で力を入れ、日本を活性化するための、様々な対策が取られるでしょう。