ものづくり補助金における収益納付とは、どのようなものなのでしょう。今回は、収益納付がどのような役割を持つのか、詳しく説明します。
補助金には「収益納付」という考え方がある
補助金には、「収益納付」という考え方があります。これから、詳しく説明します。
「収益納付」とは?
収益納付とは、補助金を受けた後に利益が発生した場合、利益の分だけ補助金から差し引かれることをいいます。
つまり、補助金を受けた後に、利益が発生しない場合は返済の義務がなく、利益が発生した時はその分だけお金を返済する制度です。
収益納付について公募要領を見てみると、次のように書かれています。以下は抜粋したものです。
【参考6】収益納付について
「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」等の規定により、補助事業(補助金の交付を受けて行う事業)の結果により収益(収入から経費を引いた額)が生じた場合には、補助金交付額を限度として収益金の一部または全部に相当する額を国庫へ返納していただく場合があります(これを「収益納付」と言います)。本補助金については、事業完了時までに直接生じた収益金について、補助金交付時に、交付すべき金額から相当分を減額して交付する取扱いとなります。
このように、収益納付とは直接発生した利益だけであり、交付された金額から相当分が減額されるようになっています。
「収益納付」の役割
では、なぜ利益分だけ差し引かれるのでしょう。収益納付が持つ主な役割について説明します。
国が配布する補助金は、国民が払った税金から支出されるものであり貴重な財源です。補助金は本来、事業がうまくいっていない人が受けれるものですが、補助金を使って利益を得た場合は、事業が成り立ったものと判断できます。
補助金で得た利益を自分のために使ってしまうと、補助金が利益に直結してしまい、制度の目的を果たすことができません。
補助金適正化法22条では、「承認を受けないで、交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け又は担保に供してはならない」と定められており、補助金によって得られた利益を譲渡、交換、貸し付け、担保にすることは法律で禁じられています。
そのため、補助金を受け取った後は、「自己利益を生じさせるものではない」ことを理解しましょう。
「収益納付」に伴う「財産処分の制限」
収益納付に伴う財産処分の制限とは、補助金によって受けた利益を国に納付することをいいます。制限という言葉が使われているのは、補助金は国の財産から支出されているものなので、制度を保つために、利益を納付するという制限をかけているからです。
そのため、収益納付に財産処分の制限がかけられており、収益を納付するように法律で定められています。
ものづくり補助金の「収益納付」は?
これから、ものづくり補助金の収益納付について説明します。
そもそも、ものづくり補助金とは、中小企業による生産向上に関するサービスの開発や生産プロセスの改善を行うための補助金です。
正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。
コロナ渦で資金の目処がつかずに困っている中小企業はものづくり補助金を利用することが多いですが、ものづくり補助金にも収益納付があります。
ものづくり補助金の「収益納付」とは
ものづくり補助金における収益納付とは、補助金によって得た利益を国に渡すことをいいます。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律では、次のように定められています。
「第七条
2 各省各庁の長は、補助事業等の完了により当該補助事業者等に相当の収益が生ずると認められる場合においては、当該補助金等の交付の目的に反しない場合に限り、その交付した補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すべき旨の条件を附することができる。」
このように、ものづくり補助金によって相当の収益が生じたとには、国に納付するように法律で定められています。
ものづくり補助金で利益を得る例としては、次のような例が挙げられます。
・補助金を使って、物を売るための道具を買った場合、その道具を使って物を売ったときの収益(機械なども含まれる。)
・補助金を使ってネットショップを開設し、ネットショップでは買い物カゴや決済機能がある場合の商品の販売をして利益を得た場合、他社のネットショップで自社の商品を販売して利益を得たとき
・補助金を使って展示会等を開催し、展示会を通して商品を販売した場合の利益
・商品を販売するためのPRを補助金よって作成し、PRによって商品を販売したとき、参加者から参加費用をもらっている場合の利益
以上がものづくり補助金によって利益を得る例であり、このような場合は、利益を国に納付しなければいけません。
また、利益として数えられない場合もあります。主に以下の通りです。
・商品の生産や購入に直接関わらない物の購入
・チラシを作成して配布する費用
・ホームページの作成と改善
・広告の記載
・お店の改装
このように、補助金を事業に使っても、利益の納付に繋がらない場合もあるので、自社が行ってることが利益の納付になるかどうかを、しっかりと把握するようにしましょう。
ものづくり補助金の「収益納付」は必須
ものづくり補助金は、補助金を受け取ってから5年以内に利益を得ている場合は、必ず収益を納付しなければいけません。収益の納付は法律で決められていることなので、収益をせずに保持しておくことは認められません。
ただし、場合によっては利益の納付が免除される場合があります。補助金の使い道が利益の納付に繋がらなかったり、十分な賃上げをした場合などです。このように、利益の納付をする場合としない場合を、しっかりと理解しておくと良いでしょう。
収益納付は必ず行わなければいけないため、見落としがないように、対象経費を明確化しておくのがおすすめです。費用の内訳が多い場合は、電子システムなどで管理すると、見落としを防ぐことができるでしょう。
ものづくり補助金における「収益納付」の計算方法
ものづくり補助金における収益納付は、どのように計算するのが紹介します。
収益納付で尊守すべき事項については、公募要領で次のように定められており、下記は抜粋したものです。
「(4)事業化状況の報告から、本事業の成果の事業化又は知的財産権の譲渡又は実施権設定及びその他当該事業の実施結果の他への供与により収益が得られたと認められる場合には、受領した補助金の額を上限として収益納付しなければなりません(事業化状況等報告の該当年度の決算が赤字の場合や十分な賃上げ(年率平均3%以上給与支給総額を増加させた場合や最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にした場合等)によって公益に相当程度貢献した場合は免除されます)。」
上記の定めに従い、直近1年間の事業化・付加価値額向上・賃金引き上げ状況については、報告書の雛形を用いて確認するのが良いです。また、報告は毎年行います。
他の補助金における「収益納付」
ものづくり補助金以外にも、たくさんの補助金があります。今回は、小規模事業者持続化補助金の「収益納付」について説明します。
小規模事業者持続化補助金の「収益納付」の例
小規模事業者持続化補助金の収益納付の交付規定をみると、次のように書かれています。以下は抜粋したものです。
「(収益納付)
第27条 理事長は、補助事業者が行う事業実施期間内に、補助事業の実施結果の事業化、産業財産権等の譲渡又は実施権の設定及びその他補助事業の実施により収益が生じたと認めたときは、補助 事業者に対し交付した補助金の全部又は一部に相当する金額を中小機構に納付させることができる ものとする。」
このように、小規模事業者持続化補助金の場合も、収益納付についての規定があり、収益が生じた場合は、納付しなければいけません。
まとめ
補助金を受ける際に忘れがちなのが「収益納付」です。また、補助金を受けた後も知らずに納付しない事例も多いです。収益納付は法律に定められているものであり、必ず納付しなければいけません。
納付方法をよく確認し、きちんと納付するようにしましょう。