IT導入補助金は中小企業や小規模事業者のITツール導入を補助する制度です。本制度を活用することで、ITツール導入のコストを抑えて生産性の向上を図ることが期待できます。本記事では、IT導入補助金について、申請方法や補助金額について解説していきます。これから補助金の申請を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
IT導入補助金とは?
ここでは、IT導入補助金の概要や2022年度の変更点について説明していきます。概要をしっかりと把握し、申請の参考としてみてください。
IT導入補助金とは
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者のITツール導入時に、その経費の一部が補助される制度です。ITツールの導入によって経営課題を解決し、業務効率化や生産性向上を促すことを目的としています。
2022年のIT導入補助金では、従来の「通常枠」と新たに創設された「デジタル化基盤導入枠」の2種類があります。
2022年度の補助額
2022年度の補助額は、最大で450万円です。
また、補助率は費用が50万円以下の場合は3/4、50万円を超える場合は2/3となっています。すでに公募が始まっておりますが、申請する枠によって締切が異なるため注意が必要です。
2022年度は「デジタル化基盤導入枠」が設立
2022年度のIT導入補助金では、新たに「デジタル化基盤導入枠」が設立されました。これは、インボイス制度への対応を見据え、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの導入費用の補助に特化した枠です。
デジタル化基盤導入枠は、個社のみが申請できる「デジタル化基盤導入類型」と、複数の中小企業や小規模事業者が連携し、同一の補助事業を実施するグループが申請できる「複数社連携IT導入類型」の2種類の型があります。
今年の募集枠について A、B類型(通常枠)
A、B類型(通常枠)ついて
A、B類型(通常枠)は、従来からある申請の類型です。A類型とB類型では、申請額や賃上げ条件などに違いがありますが、補助率はどちらも1/2となっています。
採択されることで、ITツール導入時の自己負担額が半分になると考えることができます。
A、B類型(通常枠) の補助金額と各要件
A、B類型(通常枠)の補助金額や各要件は下表の通りです。
申請前には、それぞれの類型について確認し、内容を把握しておきましょう。
A類型 | B類型 | |
---|---|---|
補助額 | 30万~150万未満 | 150万~450万 |
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
ソフトウェアに必要な業務プロセス数 | ソフトウェアに必要な業務プロセスのうち1項目以上を満たすソフトウェアである | ソフトウェアに必要な業務プロセスのうち4項目以上を満たすソフトウェアである |
賃上げ目標の要件 | 加点 | 必須 |
今年の募集枠について デジタル化基盤導入類枠
デジタル化基盤導入枠とは、2022年度より新設された枠組みです。
中小企業や小規模事業者のインボイス制度への対応を見据え、企業間取引のデジタル化を推進することを目的としています。
そのため、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフト等のITツールや、パソコン・タブレット端末・レジ・券売機等のハードウェアの導入費用を優先的に補助する制度となっています。
デジタル化基盤導入類型
デジタル化基盤導入類型の補助金額や各要件は下表の通りです。申請前には、それぞれの類型について確認し、内容を把握しておきましょう。
デジタル化基盤導入枠 | ||||
類型名 | デジタル化基盤導入類型 | |||
補助額 | ITツール | PC・タブレット等 | レジ・発券機 | |
5万~350万 | ~10万 | ~20万 | ||
内、5万~50万円以下部分 | 内、50万円超~350万円部分 | |||
機能要件 | 会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 | 会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 | 左記ITツールの使用に資するもの | |
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 | 1/2以内 | |
対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料最大2年分)、ハードウェア購入費、導入関連費 |
複数社連携IT導入類型
複数社連携IT導入類型は、同一の補助事業を実施する事業者のまとまりであることが必要です。
そのため、補助対象事業者は商工団体や観光地域づくり法人等に限られています。
申請時には、単独申請であるデジタル化基盤導入類型とは要件が異なるため、事前に内容を確認する必要があります。
IT導入補助金の対象
ここでは、IT導入補助金の対象について、対象事業者や対象ツール等について説明していきます。
自社の業種や組織形態が対象事業者に合致するのか、導入を検討しているITツールが対象ツールに合致するのかを事前に確認しましょう。
対象事業者
IT導入補助金の補助対象は中小企業・小規模事業者です。中小企業・小規模事業者の定義は、それぞれ下表に合致するかどうかで判定します。
中小企業の定義 | |
業種分類 | 定義 |
① 製造業、建設業、運輸業 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主 |
② 卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人事業主 |
③ サービス業
(ソフトウェア業又は情報処理サービス業、旅館業を除く) |
資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数 が100人以下の会社及び個人事業主 |
④ 小売業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数 が50人以下の会社及び個人事業主 |
⑤ ゴム製品製造業
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工場用ベルト製造業を除く) |
資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が900人以下の会社及び個人事業主 |
⑥ ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主 |
⑦ 旅館業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数 が200人以下の会社及び個人事業主 |
⑧ その他の業種(上記以外) | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主 |
⑨ 医療法人、社会福祉法人 | 常時使用する従業員の数が300人以下の者 |
➉ 学校法人 | 常時使用する従業員の数が300人以下の者 |
⑪ 商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 | 常時使用する従業員の数が100人以下の者 |
⑫ 中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 | 上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
⑬ 特別の法律によって設立された組合又はその連合会 | 上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
⑭ 財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) | 上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
⑮ 特定非営利活動法人 | 上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
小規模事業者の定義 | |
業種分類 | 定義 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数が5人以下の会社及び個人事業主 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 |
対象ツール
IT導入補助金の対象ツールは、
「業務プロセスのいずれかを満たすソフトウェア」「ソフトウェア(オプション)」「役務(付帯サービス)」に大別されます。
要件については事務局から認定を受ける必要があるため、事前に事務局ポータルサイトのITツール検索で確認するか、ツールを提供するIT導入支援事業者に対象ツールであるかを確認するのがおすすめです。
以下で、それぞれについて解説していきます。
①業務プロセスのいずれかを満たすソフトウェア
対象ツールは、生産性の向上やインボイス制度への対応等の業務環境改善に資するソフトウェアであることが要件となっています。また、デジタル化基盤導入類型においては、会計・受発注・決済・ECの機能を必ず1種類以上含んでいる必要があります。
②ソフトウェア(オプション)
前述①の要件を満たすソフトウェアの導入に際して、「自動化・分析ツール」「汎用ツール(テレワーク環境の整備に資するツール含む)」「機能拡張」「データ連携ツール」「セキュリティ」などのオプションも補助対象となります。
③役務(付帯サービス)
前述①の要件を満たすソフトウェアの導入に際して、「導入コンサルティング」「導入設定・マニュアル作成・導入研修」「保守サポート」「ハードウェア購入費(デジタル化基盤導入類型のみ)」などの付帯サービスとしての役務も補助対象となります。
申請・手続きの流れ
IT導入補助金の申請では、ITツールを導入する企業側とITツールを提供するIT導入支援事業者の双方で手続きが必要となります。ここでは、ITツールを導入する企業側に焦点を絞って解説していきます。
ITツールの選定
自社の経営課題を解決するのに最適なITツールを選定します。自社のニーズを明確にし、補助対象の要件を満たすITツールを選びましょう。
gBizIDプライムアカウントの取得
IT導入補助金の申請では、gBizIDプライムアカウントの取得が必須です。「gBizIDプライム」とは、経済産業省が発行する複数の行政サービスを利用するためのIDです。申請はgBizIDのホームページより行い、審査には1~2週間程度の期間がかかります。
必要書類の準備
申請に際しては、履歴事項全部証明書や納税証明書の準備が必要です。履歴事項全部証明書は、交付申請日から遡って3ヶ月以内に発行されたものに限ります。
また、納税証明書は納税額等証明用か所得金額用であること、税務署の窓口で発行された直近分のものであることが求められます。
電子納税証明書や領収書は不可であるため注意が必要です。
「申請マイページ」にて企業情報を入力
申請マイページにて、申請企業とIT導入支援事業者の双方が必要な情報を入力します。
申請企業側では、企業概要・財務状況・経営状況といった企業情報を入力する必要があります。また、IT導入支援事業者側では、事業計画・ツール情報・申請額等の上方を入力します。
交付決定・補助事業の開始
申請内容の審査を経て補助金の交付が決定すると、事務局から交付決定通知が届き補助事業が開始します。
交付決定通知より前に契約や発注が行われた場合、補助金の交付を受けることができなくなってしまうので、注意が必要です。
採択率を上げるために重要なポイント
ここでは、IT導入補助金の採択率を上げる重要なポイントについて3つ紹介します。
申請情報に不備がないか確認
交付申請時には、履歴事項全部証明書や納税証明書をPDF形式で提出する必要があります。履歴事項全部証明書は、交付申請日より3か月以内に取得したものに限られます。
また、提出書類の添付漏れがあった場合、それだけで不採択となってしまいます。提出前には、書類に不備がないかどうか必ず確認するようにしましょう。
申請内容の一貫性はあるかの確認
申請内容に審査においては、経営課題に沿ったITツールを選定しているかが重要視されます。そのため、自社の経営課題を明確にし、課題解決のために最適なITツールであることが審査員に伝わるような申請内容にしましょう。
IT導入補助金の申請は早めにしましょう
gBizIDプライムやSECURITY ACTIONの審査は、申込が集中している場合、想定していた期間よりも審査に時間がかかることがあります。これらの申請に限らず、作成書類や添付書類などの準備は、必ず期間に余裕をもって準備するようにしましょう。
まとめ
本記事では、IT導入補助金の申請方法や補助金額について解説しました。2022年度のIT導入補助金では「デジタル化基盤導入枠」が新設されました。
補助対象となる事業者や経費について、しっかりと確認するようにしましょう。また、IT補助金に交付申請は全てWeb上で行われます。gBizIDプライムやSECURITY ACTIONを事前に取得する必要がありますので、交付申請時は期間に十分な余裕をもって行うようにしましょう。