2020年補助金予算は1,000億円
2020年3つの補助金合計は約1,000億円
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路の新規開拓と生産性向上を目的とするもので、「生産性革命推進事業」という事業の中の一つです。
この「生産性革命推進事業」という事業には他にも「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」があり、この3つを合わせた補助金の合計予算は、2020年度で1,000億円の実績があります。
それぞれに支給される最大金額としては、IT導入補助金は、中小企業内でのITツールの導入を支援するための補助金で、最大450万円。ものづくり補助金は生産性を向上させる目的の補助金で、最大1,000万円です。小規模事業者持続化補助金は、一般型では50万円、低感染リスク型ビジネス枠では100万円が上限です。
2021年は予算が2倍以上
2020年は小規模事業者持続化補助金の中で「コロナ特別対応型」という特別枠が用意されていましたが、2021年からは名前が変わり「低感染リスク型ビジネス枠」という枠になりました。
そして2021年の
・小規模事業者持続化補助金
・ものづくり補助金
・IT導入補助金
を合わせた3種類の補助金の合計予算額は、2,300億円まで引き上げられました。
2020年度での3つの補助金の予算が1,000億円(新型コロナ感染防止対策のための支援を目的とした「事業再開枠」を合わせたものでも1,700億円)であったことを考えると、昨年と比べて2倍の予算になったわけです。
そのため高い選択率が予測されていたにも関わらず、今回の採択率は44.9%とそれほど高い割合ではありませんでした。
応募数が少なかったのはなぜ?
今年は昨年に比べて応募数が少ない
2020年度実施の「コロナ特別対応型」は、合計5回の締め切りに対して合計16万4,000件、平均すると1回につき約33,000件と非常に多くの事業者からの応募がありました。
その中でも第4次および第5次締め切りでの不採択数の数は合計約32,000件で、この中で多くの数が2021年度での「低感染リスク型」への応募をするのではないだろうかと予測されていました。
しかし、実際の応募者数は7,827件となり、この数は2020年度でのコロナ特別対応型の1回あたりの平均数約4分の1以下でした。
要件がかなり厳しくなった
2020年度でのコロナ特別対応型は、サプライチェーンの投資への対応 、非対面型ビジネスモデルへの転換、テレワーク環境の整備いずれか1つ以上の投資に取り組み、これに加えて補助対象経費の6分の1以上をこれらの用途に投資するなどの要件になっていました。
一方、2021年度実施の低感染リスク型ビジネス枠の場合はポストコロナを踏まえた形で、
・新たなビジネスやサービスを提供すること
・生産性プロセスの導入などに取り組む
・感染拡大防止および事業継続を両立する目的で対人接触機会の減少に貢献できるよう前向きな投資を行う
・感染防止費用を除いたすべての経費を新しいビジネスやサービス、生産性プロセスの導入などの取り組みを行うために利用する
などの要件に変更されました。
このように要件そのもののハードルが高くなり、応募者数が減少したのではないかともいえるわけです。
前年度に交付を受けた人は対象にならない
2020年度はコロナウイルス感染拡大により、多くの事業所がコロナ特別対応型を活用していたわけですが、2021年実施されている低感染リスク型ビジネス枠は2020年度のコロナ特別対応型を採択および交付決定を受けている事業者については対象外になっています。
小規模事業者持続化補助金をこれまで積極的に活用してきた事業者は低感染リスク型ビジネス枠を利用することができないことと、前年度で多くの事業者が利用したことから2021年度はその数そのものが大幅に激減したのではないか、このようにも考えらます。
事業再開枠が無くなった
2020年度のコロナ特別対応型で実施された50万円まで全額補助してくれる事業再開枠が廃止されました。2021年度の感染防止費用については感染リスク型ビジネス枠の100万円の範囲内で、補助率3/4で行われているのが特徴です。
ただし、事業再開枠は一般型でも同様に廃止されており、応募者数そのものの落ち込みはないため、事業再開枠の廃止が大きな原因ではないとも考えられます。
電子申請でのトラブルがあったと言われていますが影響については定かではないといわれており、一番の要因は対象事業要件が厳しくなったことが関与しているのではないかなどと考えられます。
これから応募する人がするべき対策
対象事業要件をクリアする
対象事業要件は、
・ポストコロナを踏まえた新しいビジネスやサービス
・対人接触機会の減少に資する前向きな投資
などになります。
この場合、補助金を得るために以前とは全く異なるようなビジネスの計画を作ることは認められず、あくまでも現在の事業を発展させるスタイルで新しいビジネスやサービスを考えることが大切です。
様々なアイデアを膨らませることがポイントになりますが、一人で考えても中々良いアイデアとなるものが出てこないケースも多いため、複数のスタッフとディスカッションすることがおすすめです。
審査項目を満たした事業計画書を作成する
事業計画書を作成する上で必要なことは、審査項目を満たす書類を作ることが大切です。
事業計画書作成のポイント
・自社の事業概要
・新型コロナウイルス感染症の影響ですでに取り組みを実施している対策
・補助事業の内容や補助事業の効果を抑える
などが挙げられます。
自社の事業概要では、一読しただけで審査を行う人が事業内容、ビジネスモデル、特徴、強みなどを把握できることがポイントです。
その他のポイントとして
・顧客となる人がどのような人物であるのか
・市場や商圏などもしっかり説明すること
・市場動向も追記する
・ビジネスモデルの特徴や売り上げ、粗利がどのような形で生じるのか
・他社と比較したときの自社の強みやこれを活かすことで事業継承が実現する
などをわかりやすく記載することも大切です。
新型コロナウイルス感染症の影響および既存で取り組みを行っている対策の項目では、
・コロナ渦でビジネスモデルのような部分が被害を受けているのか
・これにより売り上げおよび利益がどのくらい減少したのか
・影響を克服するための取り組みにはどのようなことがあるのか
これらをわかりやすく簡潔にまとめます。
補助事業の内容や効果は、
・補助事業期間内に何をどのように実現するのか
・これを実現するためにはどのような都市や対策経費が必要になるのか
・売り上げ浄化効果やその根拠など
を記します。
応募数が少なくても、採択されない可能性も
2020年度に実施されていたコロナ特別対応型では、不採択になった事業者が多く居たといいます。
2020年のコロナ特別対応型では不採択になったものの、不採択になった事業者は、2021年の低感染リスク型ビジネス枠への応募資格を持ちます。
ただ、2020年と比べると応募者数そのものは減りますが、必ずしも応募数が少ないから採択率がアップするというわけではなく、審査基準を満たさなければ不採択となってしまうため注意が必要です。
採択数が少ない理由の一つとして、提出された事業計画書などの申請書類そのものが採択レベルに達していなかった点や、対象事業の要件を満たしていないなどもあるようです。
まとめ
新型コロナウィルスの感染症は日本を含めた各国で猛威を振るい続けており、その勢いは留まるところを知りません。
ウィズコロナ時代という新しいワードが作り出されるように、事業を行う人もしっかりとウイルスと向き合う必要があります。2020年度の要件と比べるとハードルそのものは高くなっているものの、審査をする人が納得できる事業計画書を作成することで、補助金獲得への道が切り開かれます。
また、感染症予防対策は、コロナに対応するネガティブな出費などと考える人も多いかと思われますが、この対策は顧客に対して安心を与え満足度を向上させるなどに繋がるもの、そして結果的に競争優位を築き上げるための要因にもなるものです。
このように事業の将来を見据えた感染症予防対策として、小規模事業者持続化補助金「低感染リスク型ビジネス枠」活用されてはいかがでしょうか。